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本当は死にたくない。

85歳のFさん、お年の割りにお元気で、自分のことは自分で出来る方です。
なのでハッキリ言って、ヘルパーは必要ありません。

介護認定も「要支援」でした。 それでも自費でヘルパーを雇っているには理由がありました。 Fさんはどうしても話し相手が欲しかったのです。

とにかく話好きなFさん、何度も同じ話を繰り返します。 同じ口調で、同じ表情で、同じセリフで、何回も。

お宅は2世帯住宅なので、上の階には専業主婦のお嫁さんが居るのだけれど、折り合いが悪いそうです。 「この家は私が建てて、税金もいまだに私が全部払っているのに、何もしてくれない。」 と、嘆いていました。

お嫁さんにはお嫁さんなりの理由があって、話し相手にさせられるのが嫌なんだと思います。
一度捕まったら、話が長くて大変なのは想像できます。

今まで話し相手になってくれた友達は、みんな亡くなったそうで、 自分ひとりが長生きしちゃってる、といつも言われます。
「早く、私にもオムカエが来ないかなぁ、もう、いいわそれで。」
それがFさんの口癖でした。

けれど、それは決して本心ではありません。
Fさんの『生きる』ことへの執着はもの凄いのです。

東日本大震災があった時、私はそれを目の当たりにしました。

毎日毎日、たくさんのものを買い溜めし、恐ろしいほどの在庫が家にありました。

関東でも水やお米やトイレットペーパーが不足になり、 「お水は小さい子どものために譲りましょう。」という風評の中、 小さい身体のFさんは、開店時間前からあちこちのお店を歩き回り、 働き蟻のように必死で品物を買い回っていました。

その気迫は怖いくらい。。。

あまり凄いので、私は「こんなに要りますかねぇ。」と声をかけたら、

「だって、まだ死にたくないじゃない!」

と、言われてしまいました。

その一言には驚きました。

オムカエを待ってたんじゃないのかい?

と、言えるはずもなく・・・。

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